「AncTC」と「VITC」の関係の考察

 HDCAM VTR、HDW-M2000のメニュー画面を操作していたら、「UP CONV EMBEDED VITC」という設定項目を見つけた。
 取説によると、「SDテープ再生時、アップコンバートして出力されるHD-SDIエンベディッドVITCのソースを選択する」設定のようだ。 「LTC」or「VITC」が選択できるようになっており、デフォルトではVITCをEMBEDEDする設定になっている。
 取説でいう「EMBEDED VITC」とは、「AncTC」のことだと推測できる。

 CPMをV.DL(Vブランキングを表示させる)モードにして観察する。
 通常、VTRのアナログ出力やSD-SDI出力の垂直ブランキングにはVITCが見られる。一方、HD-SDI出力の垂直ブランキングにはVITCは見当たらない。

 HDのVTRにおいて、VITCは完全に排除されてしまったのだろうか。
 否。HDW-M2000本体の表示などから推測するに、VITC自体は存在するのではないだろうか。 TCG/TCRやキャラクター表示等、VTR内部の処理ではVITCを使用しているものの、シリアルデジタル信号(HD-SDI)の状態では、垂直ブランキングにタイムコードを重畳せず、アンシラリーデータにタイムコードを重畳(AncTC)しているということではなかろうか。

 「DVCPRO HD」や「HDCAM SR」等のVTRではどうだろうか。今回は身近にこれらのVTRが無かったため検証はできなかったが、機会があったら是非検証したい。

CHANNEL CONDITION NGと
テープ切断には相関関係があるのか

 先日、HDCAMにおいてCHANNEL CONDITION NGが発生し、映像・音声が正常に読めなくなってしまった(幸い収録テスト用のテープを再生している最中だった)。

 原因を特定するためにテープを早送りし、ある程度送ったところで再生してみたがCHANNEL CONDITION、映像・音声ともに問題なかった。
 そこで再び現象が起きた箇所までテープを戻し再生してみると、現象が再現した。 ―ということは、テープ側の不具合(テープ自体の不具合、もしくはこの信号を収録した収録機の不具合)が原因として最有力だ。

 原因はほぼ特定されたため、別のカセットに取り替えて再びテストすることにした。そのため、このカセットをEJECTしようとしたところ、カセットが出てこなくなってしまった。 EJECTモーターのタイムアウトも発生している。
 VTR本体の電源をOFFし上パネルを開けてみたところ、テープが切れてしまっていた。伸びた様子はなく切断されてしまっているようだ。

 CHANNEL CONDITION NGとテープ切断には相関関係があるのだろうか。
 カセット装填、テープローディングが完全ではなかったのだろうか? しかしそれならば現象再現箇所からテープを先に送ってもCHANNEL CONDITIONはOKにならないはずだ。 センサーも異常を検知していなかった。
 アンローディング動作の際に、異物の付着したヘッドチップでテープを切断してしまったのだろうか?

 テープは切断されてしまっているものの、ガイドがEJECT時の定位置まで戻っていないため、手動でアンローディング操作を行いカセットを取り出した。

 もう1回別の収録テスト用のテープをVTRにセットしてみたが問題なく動作している。CHANNEL CONDITIONも問題ない。
 念のため無水エタノールと不織布でヘッドおよびガイドクリーニングを行い、予備として運用に戻してしまった。修理をお願いしても「現象再現せず」で戻ってくる可能性大という判断だ。

 それから1週間ほど様子を見ているが、現象は再現していない。

スーパーモーションシステム

 アナログのスーパーモーションカメラを扱ったことがある。
 カメラはSONY BVP-9000、収録VTRはBETACAM SPでSONY BVW-9000だ。カメラとCCU(CCU-9000)の間はトライアキシャルケーブルで接続。CCUとVTRの接続は同軸ケーブル2本(Y信号とCTDM信号)で接続する。

 CCDの読み出し速度は通常の3倍(1秒間に180フィールド)で、収録も通常のBETACAMフォーマットの3倍の速さで行う。 テープは3倍速で走行しながら収録を行い、ヘッドドラムも3倍の速度で回転する(凄まじい音がする)。 したがって通常のBETACAM VTRと完全に互換性があり、BVW-75などで通常再生するだけで1/3倍のスロー映像が得られる。

BVP-9000 スーパーモーションカメラ BVW-9000 スーパーモーションVTR

「CTDM」とは

 BETACAM/SPのBVW-75には「CTDM」というBETACAMフォーマット(色信号時間軸圧縮記録方式)のまま信号をやりとりする「DUB/COMPONENT 1」端子がある。「SDTI」のアナログバージョンだ。

 写真左はBVW-75のリアパネル。「DUB/COMPONENT 1」という丸い端子が見える。これで「CTDM」信号をやりとりする(左はINPUT、右はOUTPUT)。

 写真右はBVW-75のフロントパネル。INPUT SELECTで「CTDM」を選択する。
 なお、CTDMはCompressed Time Division Multiplexの略である。

「SDTI」とは

 HDCAM VTRはHD-SDI信号をHDCAMフォーマットにエンコードして記録し、再生時に再びHD-SDIフォーマットにデコードして出力している。

 SDTI(HDCAM)入出力ではこの変換プロセスを通さず、HDCAMフォーマットのまま信号のやりとりをしようというもの。ダビングの際の画質の劣化を最小限に抑えることができる。
 システム側はベースバンド信号を扱っており、SDTI(HDCAM)信号などの圧縮信号には対応しないので、この信号はあくまでダビング用と捉えるべきだ。

SONY SDTIインターフェースボードHKDW-102
DVCAMにもSDTI(QSDI)があるが、SDTI(HDCAM)との互換性はない。

HDスーパーモーションシステム

 2005国際放送機器展/InterBEE2005を見学した。
 SONYブースではHDスーパーモーションカメラが参考出展されていた。1920x1080/180iのカメラだ。通常60i(59.94i)だから3倍速読み出しで、収録はHDDに行うそうだ。

参考出展された
「HDスーパーモーションカメラ」
システム図
参考出品の段階のためか、この時点で
型番は付いていなかった。

HDR-HC1

 先日デジタルハイビジョンハンディカムHDR-HC1を購入した。
 ハイビジョン撮影できる点はもちろんだが、撮像素子としてCMOSセンサーを採用している点に興味があった。CMOSセンサーはCCDと比較してダイナミックレンジが広く、スミアも出ないというのが特長だ。
 CMOSセンサーというと携帯電話のカメラというイメージだったが、CanonのEOS DigitalシリーズなどにもCMOSセンサーが採用されている。

 先日帰省したときにいろいろと撮影してみた。さすがハイビジョン画質だ。だが色付きはやはり民生機チック。――しかし十数万円の本体価格でこの画質なら申し分ない。ハイビジョンで撮影しておく意義も十分にある。

 太陽や車のヘッドライトなどに向けてもスミアが出ない。FIT-CCDのカメラで撮影しているかのよう?! ちょっとステータスだ。

 今回の撮影では気にならなかったが、動きの激しいものやパターンの複雑や映像を撮影した際、どの程度で映像が破綻してしまうのだろうか。 MPEG2の25Mbpsで記録しているということだが、これは地上波デジタル放送(最大約23Mbps)とほぼ同じビットレートだ。

 HDR-HC1で撮影するにあたって、どの程度で映像が破綻するのかを色々と試して知っておく必要がありそうだ。せっかくHD撮影するのだから、ぜひきれいに残しておきたい。

SONY HDR-HC1