各機器の『固定遅延』ってなに?

 「DSKの固定遅延は~」「AVDLの固定遅延を~」などと耳にする事がある。言葉のニュアンスから、各機器が信号を受け取って、出力するまでの「処理時間」という認識でいたのだが、どうやら違うようだ。

 先述したDSKやAVDLも、CCUやVTRのように出力位相が調整できるようになっていて、これと処理時間を足したものを『固定遅延』と言っているようである。

 下の表は2つのサブ(Xサブ、Yサブとする)における各ポイントの遅延量の様子である。

BBと比較して後段に行くほど遅延量が増してゆく。
XサブとYサブは別メーカーのシステム。

 スイッチャーOUTでは数μSの遅延差であるが、後段のDSK OUTではYサブの方が1H弱も遅延している。そしてサブの最終段であるLINE OUTでは、再び遅延量が(*)ほぼ同一になっている。

 これはYサブはDSKにて出力を遅延させて、Xサブでは、この表には無いが、最終段のAVDLにて出力を遅延させていると考えられる。

 (*)XサブとYサブはマスターまでの距離が異なるため、LINE OUTに約2μSの遅延差がある(完成図書通りの遅延量である)。マスタースイッチャーの引込範囲に入るよう、各サブの出力位相が厳密に管理されている。

カテゴリ:システム全般      このページの先頭へ

Tektronix WFM700Mの「MEASURE」を触ってみる

 当方に配置されている波形モニタ、Tektronix WFM700Mには「MEASURE」という機能がある。これはどのようなものなのか。さっそく「MEASURE」ボタンを押して観察してみる。

 画面左側に注目すると、波形が3つ表示されている。これは上から「Y」「Cb」「Cr」とあることから、各チャンネルのレベルを表示している。

写真1 は「Y」、は「Cb」、は「Cr」のレベルを表示している。
ここはまだアナログ的。

 下の写真2-1のに注目する。「Samp#」とあり、縦にサンプル番号が並んでいる。に目を移すと「Line: 21」となっており、指定したラインのサンプル(ここでは0 Sample前後)を表示していることが分かる。
 SampleとはH方向の画素という認識で良いと思われる。よく耳にする「1920 × 1080」は単位をつけると「1920 Sample × 1080 Line」ということになる。

 次に写真2-2に注目する。は0 Sampleのデータを、は1 Sampleのデータを示していると思われる。なおここでは、データの数値を16進数(Hex)で表示するように設定している。

写真2-1 写真2-2

 さて、上で見てきた数値は画面左側の波形上ではどこになるのだろうか。2196 Sampleから始まるSAVを見ていく。
 2196 Sample「Y:3FF」、2197 Sample「Y':000」、2198 Sample「Y:000」、2199 Sample「Y':200」を波形上に色を変えて書き込んだものが下の写真3である。波形上の縦線は波形の幅に合わせて当方で書き込んだ。この幅がSample辺りのYデータの幅ということになるだろうか。

写真3

 Cb、Crに関してもY、Y'と同じ要領で作業したものが下の写真4である。
 CbとCrが1つの同じSample上に表示されているようだ。しかも波形の幅がY、Y'の倍になっているようだ。Yは1 Sample毎にデータが存在するのに対し、Cb、Crはそれぞれ2 Sample毎にしかデータが存在しないので、データの幅が倍になっているということだろうか。

写真4 のCb、Crは2196 Sampleに、
のCb、Crは2198 Sampleにいる。

 ここで、以前ご紹介した1フレーム分のデータ配置図を再出する。これを見ながらMEASURE画面を操作するとより知識が深まる。

MEASURE画面を注視していると、1920 Sampleからライン番号が繰り上がる。

 「MEASURE」は「LINE SEL」よりも短い一瞬 = 1 Sample単位の信号の状況を確認できる機能であることが分かった。

カテゴリ:システム全般      このページの先頭へ

Active Picture(映像領域)の外を観測

 下の表はTektronix WFM700MのMeasure機能を使って観測した、4:2:2、59.94iのHD-SDI信号のマッピングの様子である。

APの外に主眼を置き、かつA4サイズの用紙1枚に収めたかったため、
AP部分の面積が異様に小さくなってしまった。

 HANCに重畳される音声データはメジャーであるが、他にも様々なデータが重畳されており、まだまだ研究の余地がある。

HDとSDの画面サイズの比較

 まず、一般的なHDの画面サイズを確認してみる。有効画面のサイズは横に1920ピクセル、縦に1080ピクセルであるから図1のようになる。

図1 1920x1080

 SDの画面サイズはどうだろうか。有効画面のサイズは横に720ピクセル、縦に486ピクセルである。図1にこのサイズを重ねたものが図2である。

図2 HDとSDではこんなにも大きさが違う

 HDとSDでは画面サイズに4倍以上の差がある。画面サイズだけを考えるならば、スイッチャーのDVEを使って、小さな画面(SD 720x486)を大きく(1920x1080)拡大しているような感覚である。 SDをU/Cすると映像が荒れてしまうのも頷ける。

 以上はU/Cの「FULL」(16:9に引き伸ばす)モードである。当方ではU/Cは「SIDE」(画面の左右にサイドパネルを付加する)モードを主に使っており、上記とは若干異なってくる。

 サイドパネル部分は画面の両側それぞれに240x1080のバックカラー(BLACK 0%)を付加する設定をしている。 したがってU/Cとしては、720x486を1440x1080に拡大し、240x1080のバックカラーを画面の両側に付加し、最終的に1920x1080としている。

図3 サイドパネル部分も含めると1920x1080になる。

カテゴリ:システム全般      このページの先頭へ

扱っている信号はデジタル

 私たちが普段扱っている映像信号はデジタルの信号である。機器間は75ΩのBNCコネクタと同軸ケーブルによって接続され、シリアルデジタル信号として伝送されている。

写真1 WFMのMEASURE機能で21ラインの0サンプル目を
表示しているところ。私たちが扱う映像信号の本来の姿。

 このようなデジタルの信号を、波形として直感的に見せてくれるものが「WFM」、映像として見せてくれるものが「映像モニタ」である。

写真2 Y, Pb, Prの波形表示。

 この写真は写真1 MEASURE画面で表示したデータを波形として表示したものである。
 左からY, Pb, Pr = 輝度信号, 色度信号(ブルー色差信号), 色度信号(レッド色差信号)の順に並んでいる。
 色度信号について、Pb, Prと表記されている場合とCb, Crと表記されている場合がある。これはそれぞれ、アナログの色度信号、デジタルの色度信号を区別する場合の表記方法である。

 1つの映像を構成するために、Y, Pb, Prのような複数の信号を必要とすることをコンポーネント(方式・映像信号)という。
 HDTVもY, Pb, Prの3信号から構成されるコンポーネント信号であるから、本来ならば、機器間の接続には同軸ケーブルが3本必要である。 これをシリアル・デジタル化することにより、機器間を同軸ケーブル1本で接続することができようになっている。

ComponentのVector波形が網目状に表示される

 波形モニターのVector表示をComponentモードにする。それを拡大表示(x10)して観測していると、Vector波形が網目状になる場合があることに気づいた。

 まずはカメラ出力を観測してみる。これはどうだろうか。

カメラOUTのVector波形
カメラ出力のVector波形。網目状にはなっていない。

これをHD-VTRに収録・再生してみる。

HD-VTR録画/再生時のVector波形
HD-VTR録画/再生時のVector波形。
網目状になっているのがお分かりいただけるだろうか。

ノンリニアでも収録・再生してみたところ、HD-VTRと似たような波形表示になった。

ノンリニア録画/再生時のVector波形
ノンリニア再生のVector波形。
網目の様子が上のHD-VTRとは若干異なる。

 このような傾向は圧縮HDネット回線、マイクロやSNG伝送されてきた映像信号にも認められる。 以前マイクロやSNG伝送の資料を覗いた際に、水平画素数×垂直画素数を1440×1080程度にまで間引いて伝送する設定がある旨読んだ記憶があるが、このような水平画素の間引きによって波形が網目状になるのだろうか? 波形が網目状になる要因が水平画素の間引きだとすれば、今回の実験で使用したHD-VTRやノンリニアもこれを行っているということだろうか。

 尚、水平画素数1440というのは、伝送の送受信間や収録機材内の処理上の問題で、通常、受信機や収録機材のHD-SDI OUTからは水平画素数1920×垂直画素数1080のベースバンド映像信号が出力されることに注意したい。

 因みに、同じVector波形でも、Compositeモードではこのような波形表示にはならないようだ。

TSGのカラーバーにドット状のごみ

 当方で使用しているカラーバーには下のイメージのようにID(指定した文字列)を挿入しているのだが、IDのBLINKと同じタイミングでドット状のごみも一緒にBLINKしてしまっている。

画面の中央、グリーン上でIDとともにBLINKしている。
実際は背景のグリーンに輝度が近く、ドットも小さいため目立ちにくい。

 IDとともにBLINKしていることから、IDをOFFすればドット状のごみも消失するだろうか。しかし、実際にIDをOFFしてみたが、消失することなく、ドット状のごみだけがBLINKしてしまった。

ドット状のごみだけが残ってBLINKしている。

 IDをONに戻して、BLINKをOFFにしてみる。IDを一旦削除して入力し直してみる…等々。メーカーさんに問い合わせる前に、ユーザー側で試せることがまだありそうだ。時間を見つけて試そうと思う。

カラーバーの工夫

 当方で使用しているカラーバーには下のイメージのようにID(指定した文字列)を挿入している。これはどこのサブコンからの信号なのか、一目で判断できるようにするためである。
 そしてもう一つは、IDをBLINK(点滅)させるようにしている。これはTSGの故障がすぐに判断できるようにするためである。 TSGからのカラーバーが断になっていたらそれ以前の問題であるが、IDをBLINKさせておくことによって、故障箇所の発見が迅速に行えるのであれば使わない手はない。

IDがBLINKするように設定した例

 ネット回線やマイクロ回線、SNG回線などの局外回線(いずれもデジタルの回線)のラインチェックにおいて、カラーバーの一部が動いているのは非常に有効で、回線自体が正常につながっているかの重要な判断材料となる。 回線が正常でなければブロックノイズが発生してBLINKがぎこちなくなったりするし、BLINKしていないと回線が断になってフリーズがかかっている恐れがあるという判断もできる。

 カラーバーのパターン自体が水平に動いているのは度々見かけるが、水平や垂直にランダムに動くタイプも見かける。 ある他系列局のカラーバーでは局名とともにCIRCLE(円)もBLINKしていた。なるほど便利だ。画角が正しいかどうかが一目瞭然である。
 BLINKするのはIDやCIRCLEだけにはとどまらず、各局のロゴやマスコットもBLINKする。BLINKするだけではなく、マスコットがピョンピョン飛び跳ねたりするものも見かける。

 回線のラインチェックを確実に行うことが目的であるが、局によってプラスアルファの様々な工夫や考え方があり、見ているだけで楽しい。

D/AコンバータのCLIP設定

 Composite (NTSC) の復習のために、アナログ波形モニター Tektronix 1740Aを用いて様々な信号を観測している。 しかしながら、用意できる"ピュアNTSC信号"は限られているため、苦肉の策としてHD-SDIの信号をD/C、D/AしたComposite信号を観測している。

 Composite映像信号で100%飽和のカラーバーを扱うことはあまり無いが、興味本位からこれを1740Aにて観測してみることにした。すると、下の写真のような波形になってしまった。

上は100IRE付近、下は-10IRE付近で
切られてしまっている。
信号に合わせて100%表示にしているが
6色全てが"田"に収まっていない。

 100%飽和カラーバーなので黄とシアンのクロマ成分は、上に131IRE付近まで伸び、赤と青のクロマ成分は下に-30IRE付近まで伸びているはずである。

 これは、ホワイトクリップ(W.CLIP)とブラッククリップ(B.CLIP)が最大にかかるように設定してあったことが原因であった。さっそくCLIPを最小に設定してみる。

上も下もクロマ成分が伸び、
素直な特性が得られているようだ。
"田"の中に収まっている。

 過剰なCLIP設定とも思えるが、ガマトエラー防止対策にこのような設定になっていたのだろうか。いや、やはり過剰すぎる。 通常の75%飽和のカラーバー(ARIBカラーバーの4:3サイドカット)においても、赤と青がB.CLIPの影響を受けてしまっていた。

 再び両CLIPの設定を元に戻して、75%飽和カラーバー(ARIBカラーバーの4:3サイドカット)を1740Aで観測してみる。なお、VECTORの表示も75%に戻してある。

写真では判別しづらいが、黄、シアン、
マゼンタにもCLIPの影響が及んでいる。
赤と青のクロマ成分が"田"に
収まっていない。

 CLIPを最小の設定にすると、100%飽和カラーバーの時と同様、素直な特性になった。

 今回検証を行ったのは、通常使用していないラインであるが、アイソレーション収録にも使用できるライン上にあるD/Aコンバータである。 幸いComposite収録で、というオーダーが無かったため問題にならなかったが、一歩間違えれば危険な事象であった。

すべては規格に“支配”されているはずなのに…

 当Webからリンクさせていただいている「百日紅」のUさんより、大変興味深い情報をいただいた。

 最新式HDVカメラ(以下“CAM”)のHD-SDI出力を、1999年~2000年頃発売のあるデジタルHD-VTR(以下“VTR”)にHD-SDI入力したところ、映像は出るもののエンベデッドオーディオを認識しないという事象が発生しているという。 なお、他のデジタルHD-VTRではこの事象は発生しないという。

 すべては規格に“支配”されているはずなのに、なぜこのようなことが起こるのか。
 まずこの2つの機器の仕様を取扱説明書とWebサイトから調べてみた。CAMもVTRもSMPTE292Mに準拠しているようだ。さらに、CAMの方はSMPTE299Mへの準拠も列記されていた。
 SMPTE292MはHDのコンポーネント信号をSDI伝送するためのインターフェースや信号フォーマットを規定している。最新版は1998年に規格されたSMPTE292M-1998である。
 SMPTE299Mは292MのSDIに重畳する音声信号フォーマット(エンベデッドオーディオ)を規定している。最新版は2004年に規格されたSMPTE299M-2004である。

 当初、Uさんよりこの事象を伺ったとき、VTRの仕様書に299M準拠の記載がないことから、VTRが299Mに準拠しておらず299M準拠のエンベデッドオーディオを認識できないのではないかと考えていた。 さらに、299M-2004が初版であり、これ以前に発売されたこのVTRは規格外のVTRだと認識してしまっていた。

 ところがこれは大きな誤りで、299M-2004は初版ではなく299M-1997からの改訂であることが分かった。従ってこのVTRも仕様書に299M準拠の記載はないものの実際には準拠しているものと思われる。

 後日Uさんより「CAMのHD-SDI出力の方が規格違反を起こしていることが判明」とのご報告をいただいた(VTRの方は濡れ衣であった)。
 ではなぜVTRでのみこのような事象が発生して、他のデジタルHD-VTRでは事象が発生しないのだろうか。
 これは、VTR以外の機器ではメーカー側で配慮して、あらかじめ規格を緩くして設計しているからだそうだ。

 すべては規格に“支配”されていると思っていた世界に、規格自体に曖昧な部分が存在し、そしてそれを回避のために一定の余裕度を設けて設計している機器があるというのは興味深い。

 大変貴重な情報をありがとうございました。Uさんには重ねてお礼申し上げます。

デジタルクリフ

 スタジオの設備は良く考えられて設計されており、滅多なことではデジタルクリフに遭遇することはない。しかし先日、運良く(?)デジタルクリフに遭遇した。

 ラック室から一番遠いコネクタ盤に30mの同軸ケーブル(5C-FB)を接続し、再撮モニターを引き回したところ、映像が映ったり、消えたりしている。見事に(?)デジタルクリフが起こっている。

 デジタルクリフは「SDI信号は「一定の距離」までは劣化することなく信号を送ることができるが、それを超えると映像が乱れたり、完全に断になる」ことであるが、今回この「一定距離」を超えてしまったようだ。

 HD-SDIの伝送可能距離は5C-FB相当の同軸ケーブルで100m程度(メーカーではこの70%の距離で使用することを推奨)と言われているようだ。

 100mの70%は長いようで意外と短いかもしれない。送信機器(ここではラック室のDDA)から受信機器(ここでは再撮モニターに抱かせているD/A)までがこの距離に収まらなければならないからだ。
 ラック内のケーブル長もパッチケーブルのケーブル長も、ラック室からコネクタ盤までのケーブル長も考えなければならない。 特にラック内のケーブル長、ラック室からコネクタ盤までのケーブル長に関しては、必ずしも把握できているわけではない。

 各所コネクタのインピーダンスマッチングや、ケーブルの劣化、送信機器と受信機器の性能の良し悪しも「一定の距離」に関係しそうだ。

 結局フロアさんに、別のコネクタ盤から再撮モニターを引き回すようお願いした。

「プログレッシブ」と「セグメントフレーム」

 IkegamiのHDK-79EXの取説を見ていたら、セグメントフレームについての解説を見つけた。そこにはこのような記述があった。

『プログレッシブ信号を1ラインごとに抜き出し、飛び越し走査に変換して出力します。』

 1080/24Pフォーマットを伝送する際に、そのまま伝送するのが(24P)、インターレース化して伝送するのが(24PsF)ということだそうだ。

24Pと24PsFの違い
24Pと24PsFの違い(イメージ図)

参考文献:LEADER 技術資料「ディジタル映像信号の測定法」

アンシラリーデータに重畳されたタイムコード

 SDI信号におけるANC(アンシラリーデータ)の利用といえば、エンベデッドオーディオが思いつくが、ノンリニアやVTRのSDI出力にはタイムコードも重畳されていることがある。

 ANCに重畳されたタイムコード=「アンシラリータイムコード(AncTC)」を観測してみる。まず機器単体の出力をWFM700に接続し設定を確認する。

WFM700の設定を確認
写真1

「CONFIG」→「Video Inputs/outputs」から「Timecode」を選択。
「Auto」か「ATC」が選択されていることを確認する(写真1)。「WFM」や「VECTOR」などを選択しCONFIGメニューから抜けると、画面左上に「Anc TCxx:xx:xx;xx」という表示がされる(写真2)。

このような表示に…
写真2

VDA、EQA

 以前はケーブル補償できないタイプがVDA、ケーブル補償できるタイプがEQAなどと区別していたが、現在はVDAにもケーブル補償機能が付いている。

 「GAIN」では全体のレベルを、「COMP」ではケーブル長によって減衰してしまった高周波成分(波形なまりやクロマ成分)を改善する。
 しばしば「コンペ(COMP)」などと言っているが、正式にはコンペンセータ(compensator)と言う。

 HD機器もEXT.REFはBBを用いる場合が多く、これらへのBB供給にアナログVDAは今後も活躍する。

VDAの例。
これらでBBを各機器に分配している。

アクティブスルー(active through)

 写真は映像モニター背面の映像入/出力コネクタである。これらはすべてアクティブスルーになっている。

SONY BVM-9044QDのD1-SDI入力端子 SONY BVM-Dシリーズに実装されているD1-SDI入力ボード Ikegami HTMシリーズに実装されているSDI入力ボード
SONY BVM SONY BVM-D Ikegami HTM

 アクティブスルーでは入力された信号をリクロック(再生成)して出力している。SDI機器はほとんどがアクティブスルーになっているようだ。

インピーダンス整合

 同軸ケーブルには50Ωのものと75Ωのものが市場に出回っているが、映像信号を接続するのに用いるのは75Ωの同軸ケーブルだ。サブコンやラック室にある同軸ケーブルは、特殊用途を除いては75Ωのもののはずだ。

 しかしケーブルの両端に付いているBNCコネクタはどうだろうか。最近購入したものは75Ωのものに統一されているが、以前使用していたものは50Ωのものがほとんどだった。

 見分け方は――新しいものは75Ω、古いものは50Ω…ではない。コネクタを正面から観察すると容易に区別が付く。コアとシールドの絶縁体の厚みが異なっている。薄い方が75Ω、厚い方が50Ωだ。

終端の比較
写真左が75Ωの終端抵抗。右が50Ωの終端抵抗。絶縁体の厚みに注目。
写真は終端抵抗だが、BNCコネクタにもこの法則があてはまる。

 インピーダンスが違うと信号ロスが起こる。そして特に高周波になるほどそれが著しくなるそうだ。HD-SDIやSD-SDI信号は高周波であるから、よりインピーダンス整合にシビアになる必要があるという。

 同軸ケーブルについてはアナログの時代から75Ωの同軸ケーブルの使用が徹底されていたが、HD-SDIやSD-SDI信号を扱うようになった昨今ではコネクタのインピーダンスにも気を遣う必要があるようだ。

波形歪み
アンダーシュート、オーバーシュート、リンギング

 図のとおり、赤線が本来の波形の姿である。これが、信号が通過してきた機器の特性や劣化、回線の状態など様々な要因により緑線のような波形になってしまう。

カラーバーの種類

 SMPTEカラーバー、マルチフォーマットカラーバー、フルカラーバーなど、カラーバーには様々な種類がある。前2つのカラーバーは75%カラーバーだが、 フルカラーバーは75%の場合と100%の場合があるのでFSなどで調整する際には注意が必要だ。75%カラーバーだと思ってCHROMAを調整したら、実は100%カラーバーで、 生画になった時にCHROMAが抜けてしまっているということもありえる。
 フルカラーバーの時には75%か100%かを見極めてVECTORのスケールを適宜切り替えなければならない。

SMPTEカラーバーの例
SMPTEカラーバーの例

100%フルカラーバーの例 75%フルカラーバーの例
100%フルカラーバーの例 75%フルカラーバーの例

「ビデオコーデック」ってナニ?

 ビデオコーデックはエンコーダとデコーダからなる。

 「CODEC」は「COmpression」「DECompression」の略である。

 エンコーダではデータの圧縮(CO)を、
 デコーダではデータの伸張(DEC)を行う。

マルチフォーマットカラーバーのナゾ

 いつもお世話になっている「マルチフォーマットカラーバー」のナゾ。100%シアンの右横の茶色い部分は一体何なのだろう…。 そんなことも知らないでVEやってるのか!と言われてしまいそうだが、きょうやっと謎が解けた。

マルチフォーマットカラーバーの例
マルチフォーマットカラーバーの例

 これは「+I信号」である。WFM700をVECTORモードにして観測してみるとI軸上にぴったりといる。

 ベクトルスコープで肌色の具合を見るとき、NTSCではベクトルスコープのスケールのサークル部分にバーストが触れる位までVariable GAINで拡大して観測していたが、HDの「マルチフォーマットカラーバー」になってからはバーストも-I信号もQ信号も無いので、Variable GAINでどの位まで拡大すればよいのか試行錯誤だった。

 邪道かもしれないが、天カメなどSMPTEカラーバーが出るカメラを《BAR》に切替え、-I信号とQ信号がVECTOR(Composite)モードのサークル部分に触れる位までVariable GAINで拡大する(x2.80位)。これをデフォルトとして運用してきた(もちろんその前にできるだけ厳密にカラーバーを合わせる必要があった。 また、I信号とQ信号のバランスが良いカメラを選択する必要がある)。

 しかし今度からは「+I信号」をVECTOR(Composite)モードのサークル部分に触れる位までVariable GAINで拡大するだけで良くなった。2.83×位(前述の邪道と思われた方法も意外と正確だった)になるだろうか。

 同じマルチフォーマットカラーバーでも、この「+I信号」の部分を「100%白」にも「75%白」にも設定できるので、その場合はSMPTEカラーバーの-I信号とQ信号を利用する方法も有効かもしれない。

SDIとは

 コンポーネント(Y, B-Y, R-Y)映像信号と音声信号、補助データをデジタル化し、1本の同軸ケーブルでシリアル伝送できるようにしたもの。 SDIはSerial Digital Interfaceの略。HD-SDI(1.485Gbps)=SMPTE292M規格、SD-SDI(270Mbps)=SMPTE259M規格。

 アナログの映像信号にあったH.SYNCなどのタイミング信号は、TRS(Timing Reference Signal)に集約されている。SAV(Start of Active Video)やEAV(End of Active Video)などがそれにあたる。 “Active Video”は映像部分を指す。

 厳密には音声信号も補助データ(ANC:アンシラリーデータ)扱いで、このエリアにAES/EBUデジタル音声を最大16chまで重畳することができる。