ラインチェックにおける本社側と中継先の立場

本社側「時間どおりにラインチェックしたい」
中継先「スケジュールどおりに進行せず時間どおりにラインチェックができない」

 中継先から回線をもらい生中継を行う際、本番前にラインチェックを行う。そのタイミングについて本社側と中継先のスタッフでそれぞれの事情がある。

 中継先のVEによると、ラインチェックの予定時刻にリハーサルが伸びるなどして、基準信号(カラーバー・1kHz)を出せないことがあるという。
 一方中継を受ける本社側のVEによると、その時間に合わせてセットアップしており、労務上ラインチェックの時間を早くすることは難しく、トラブルシューティングの観点から遅くすることも避けたいという。

 どちらの事情も理解できる。ラインチェックのために早く出社できない、だが放送事故はあってはならないという矛盾を解決するために、VEができることは無いだろうか。

ラインチェックができないからと席を外してはいけない。リハーサル中の生画と生音にて、映像と音声にノイズが乗っていないかを確認する。
 扱う信号がSDIになってから、信号経路上のFS等の機器の設定がデフォルトになっていれば信号レベルがズレてしまうことはない。反対にデフォルトなのに信号レベルがズレてしまうということであれば、機材の不調を疑うことになる。 これを踏まえると、ラインチェックの前にサブコンのFS等の機器の各種設定がデフォルトになっているか確認しておく必要がある。ここで言うデフォルトは、入力した信号レベルがズレることなくそのまま出力される設定になっていることを指す。

 さっそくリハーサル中の生画と生音にて、映像と音声にノイズが乗っていないかを確認してみる。ここでノイズが疑われても、すぐに中継先に問い合わせてはいけない。まずは本社側でノイズが発生していないかを確認していく。

 ここで発生時刻や頻度、どのようなノイズなのかをメモしておくと良い。例えば、XX時XX分XX秒頃:映像が黒味に落ちる、5秒〜10秒間隔で音声にプチッというノイズが乗る等というようにメモしておく。

 確認作業の話に戻る。サブコン内を確認するには、中継回線をもらっている最上流にTSGを割り込んでみると良いだろう。また別ラインで進行中のリハーサル中の生画・生音を監視できるとなお良い。切り分けにもなるからだ。

 映像は波形モニターでY,Cb,Crのレベルを確認する他にも、measure機能を使ってCRCエラーの確認を、音声はヘッドホンを用いて検聴する。

 サブコン側が問題無いということが分かったら、さらにその上流の回線センターや回線業者に確認してもらう。ここで先程のメモが役に立つ。
 こちらでノイズが確認できなければさらに原因を特定することになる。反対にサブコンと同じようにノイズが確認できたとしたら、中継先のトラブルの可能性が濃厚になってくる。早急に中継先に連絡して状況を伝える。

 カラーバーをOAするわけではないので、これまでのチェックである程度の安全は担保されるだろう。あとは中継先が落ち着いたところで基準信号を出してもらい最終確認、リップシンクのチェック等も行って本番に備える。

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「見やすい番組資料」とは?

 特番のみならず日々の番組においても番組資料を作成することがある。

 特番において系統図(接続図)等を作成、本番の数日前からメンバーに展開したところ「プリントアウトしたらフォントサイズが小さくて見えない」、「タブレットで見ているが拡大縮小を頻繁にしなければならない」「詳細すぎで必要な箇所が見つけづらい」などのご指摘をいただいたことがある (なおこの時は修正は行わず、A3サイズ4枚に分割コピーして貼り合わせて掲示した)。

 ご指摘を受け、見やすい資料を心がけたつもりが美しさやまとまりを最重視した資料となっていたことに気付かされた。では見やすい資料とはどういうものなのか考察してみた。

 私の例では、まずはフォントは大きく(最小でも8ポイントまで、フォントの選択等)、省略できる部分は極力省略(例えばDDA OUTの番号は書かない等)、反対に制御系などは思い切って別資料化する等の変更を行ったところ、表立ったご指摘を受けることはなくなった。

 その他に留意していることとしては、当日システムを構築している段階において、チーフが現場につきっきりになり指示出ししなければならなかったり、資料の解説をしなければならなかったりというのは好ましい状態とは言えない。また、一つの系統にも関わらずページを渡らなければならない資料も良い資料とは言い難い。
 最も避けたいのが、バージョン管理ができていない資料で、変更が発生したにも関わらず、修正された箇所とそのままの箇所が混在していまっている状態である。

 見やすい番組資料とは「思考停止していても理解できる資料」、「系統図が読めるVEならば誰でも理解できる資料」、「チーフがその場に不在でもチーフの意図通りにシステムを組み上げられる資料」ではなかろうか。
 初めの「思考停止していても・・・」は最も重要で、制作等からの系統変更などの依頼は時として多忙なタイミングで訪れる。現場が混乱し思考停止気味でも資料を見れば間違えることなく変更作業を行えることが重要なのである。

 私自身実現できていないのだが、レゴブロックやIKEAの組立図のような、最低限の文字とビジュアルだけで伝えられる資料を目指したいと試行錯誤している。

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